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岡崎  勝彦 さん
論壇 外国人参政権 ―21世紀の共生社会のために

<プロフィール>
岡崎 勝彦さん
愛知学院大法科大学院教授、主な編著書に『現代行政法入門』(法律文化社)
『外国人の公務員就任権』(地方自治総合研究所)など。

二十一世紀こそは、多民族・多文化共生祉会の実現とその制度保障の一環として、ともに地域社会を構成する外国籍住民に対する地方参政権の具体的保障が求められている。憲法が保障する地方自治制度は、住民の自己決定権に基づき、住民が自己の統治団体(自治体)によってその地域の公共事務を処理すること、すなわち地域の管理・運営をその構成員である住民の意思によって行うことにある。自治体の意思形成のプロセスへの参画こそが参政権の保障であり、地域住民の生活権の保障の前提となる。

今国会に公明、保守両党が提案した永住外国人地方選挙権付与法案に対し、自民党内での意見調整が難航し、慎重論が台頭している。同法案は自己申請を前提とし、保障対象を永住外国人(永住者・特別永住者)とし、保障範囲をさしあたり地方選挙権のみに限るというものである。

この法案に対し、憲法一五条一項がいう参政権について、公務員の選定罷免権は「国民固有の権利」であり、外国人には認められない、また地方公共団体は国の統治機構の「不可分の要素」であるから、地方だけに外国人の参政権を認めることはできないという反対意見がある。

しかし、「国民固有の権利」とは、官吏の任命権を積極的に天皇大権の一部としていた旧憲法に対し、国民主権のわが現行憲法では、公務員の選定罷免権が究極的には国民の意思に基づき、奪うことのできないものであることを明確に表明したものであり、外国人の公務就任権を一般的に否定するものではない。

また、地方公共団体は単なる国の統治機構の「要素」ではなく、国とは対等・並立の関係に立つ統治団体であることを憲法は保障している。

ところで、一九九五年二月の最高裁判決は定住外国人の地方参政権に道を開く初めての画期的な憲法判断を示した。判決は傍論において、永住者などに法律で地方選挙権を付与する措置を講じることは憲法に禁止されているものではなく、ただ「この措置を講じるか否かは、専ら国の立法政策」の問題であるとした。

自民党内には、この傍論を付帯意見にすぎず、先例としての拘束力を持たないと批判する人たちがいる。

しかし、裁判所が傍論において政府や立法による機敏な対応への期待を述べることは全く問題はないし、その後の判例もまた被選挙権を含めて、この立法政策論を引用している。

今回、新たに浮上した論点に、その対象者を旧植民地の朝鮮半島・台湾出身者とその子孫に与えられる特別永住者に限るというのがある。この「特別永住者」は周知のとおり、戦前の強制連行を契機とし、戦後は東西冷戦構造の渦中にあって、「追放と同化」政策による厳しい差別処遇を受けてきた。「特別永住者」のみへの付与はむしろ、戦後処理の一環として位置づけられる。

しかし、「在日」が地方参政権保障を戦略的課題としてきたのは、地方参政権を行使することが地域住民として、相互に等しく平等な立場で共生しうる前提となるからである。「特別永住者」への限定は「在日」の本意ではないし、一部にあるように便宜的に、かつて日本国籍を持っていた「特別永住者」の第一世代に限ったり、「帰化」の促進を持って日本人への「同化」を迫るなどは、もはや論外である。

今や世界的に見れば国家連合、二重国籍の容認など、国民主権―国民―国籍という強固な観念的枠組みは、それ自体が相対化されつつある。

私は冒頭に述べたとおり、定住外国人の地方参政権の根拠を住民自治におくものである。二十一世紀の日本においては、分権化社会の到来とともに、治者と被治者との一致の確保を図るために、少なくとも納税の義務を果たし、生活者住民として地域生活共同体と密接な生活関係を形成している定住の外国人に対して、被選挙権も含めた参政権を認めるべきである。

定住外国人の参政権をめぐる今後の展開こそ、わが国の人権度・分権度・共生度が試されているのである。